講演概要

 最も多様性に富んだ生きものと言われる昆虫。中でも昆虫に特に顕著に見られる擬態に演者は最も
興味を惹かれる。擬態とは何か他のものに似る現象をいう。例えば葉に似るコノハムシ、毒のあるハ
チに似る様々な昆虫たちなどである。単なるそら似といってしまえば終わりであるが、その類似の巧
妙さは驚くべきものがある。
 自然界での擬態昆虫たちの行動を見ることは常に驚きである。人間は視覚によって様々なものを見
る。昆虫の主な敵である鳥や爬虫類も視覚動物である。擬態する昆虫たちはその擬態を生き延びるため
の戦略として使う。敵が私たちと同じ視覚動物であるから、その擬態は私たちにとってわかりやすい。
 擬態がどのようにして生じてきたかは、わからないことだらけである。まずは実際の擬態の例を多
く観察することから、考え推論していくことが大切であると考える。演者は45年間擬態昆虫を追い求
めて世界各地で写真を撮り続けている。今年もタイやアフリカで様々な擬態昆虫を撮影。特にタイで
は毒のあるチョウとそれに似たチョウをたくさん観察した。それはベーツ型擬態(毒のあるものに無
毒のものが似る)、ミューラー型擬態(毒のあるもの同士が似る)、さらには毒のないもの同士が似
るという不思議な例も観察し、擬態を考える上で、貴重な体験ができたと思う。まずは多くの写真を
見て頂き、擬態について考えて頂ければと思う。

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